フィンケ監督コメント

シーズンが始まったときにも、私は積極的にこの両サイドバックのポジションで選手の補強をしていくということを考えませんでした。なぜかと言うと、私はまず、現時点でこのチームに所属している選手たちを起用していこうと考えたからです。ですので、長い間ケガをしていた平川忠亮、もしくはアレックスなど、これらの選手がしっかりとケガを治して戻って来て、チーム練習に合流して、彼らが試合に出ることを願っていました。
〜中略〜
そしてもちろん、過去の情報だけが大切なわけではありません。私は毎日選手の練習を見ているわけですし、それによってさまざまな情報を得ることができます。そして、これらのすべての情報を事実として私がクラブに伝えたのは、『現時点では彼と12ヵ月間という契約延長を結ぶことはお勧めできない。だからこそ、もう少し様子を見て、彼の体がどうなるのか、彼の今後の練習でのパフォーマンスがどうなるのかということをすべて見極めて、彼の契約延長について話し合いをしよう』ということでした。
なぜかというと、彼は一人の選手としては優れているので、私はぜひ彼を来年もこのクラブに残したかったわけです。しかし、今すぐ12ヵ月間のオファーを出すということを、私はクラブに推薦するという ことはできませんでした。
〜中略〜
そしてアレックスの場合は約2年半にわたって、何度もケガをしていた、そして現時点でも毎日の練習からさまざまな情報を得ることができたわけですが、とても体調面で優れているわけではなかったのです。そして私たちは2週間おきにさまざまなスプリントテストを行なって、瞬発力を調べていますが、そこでも残念ながら彼にはいい結果を見ることができませんでした。そのような総合的なすべての情報を総合して、クラブに対して、『今すぐこの選手に12ヵ月間の契約延長をするべきです』ということを、私は言うことができませんでした。クラブに対して、責任を持って推薦することはできませんでした。
〜中略〜 以下、補強の話。
(アレックスを放出した分、他の選手を獲得する予定は?)
「もちろんあります。しかし、ここ最近になって補強に動き出したわけではありません。このクラブとサインをした日から、各ポジションで補強をできないかと、さまざまな情報を得たりしています。しかし、その補強する選手というのは、私たちのクラブの予算で獲得できる選手でなければならないということは、皆さんにもご理解いただけることと思います。クラブ内のさまざまな人間と私は話しをしていますし、チームダイレクターやクラブのスカウトたちとも、どのポジションで選手を獲得しようとしているのか、みんなよく分かっていると思います。アレックスがいなくなったからといって、突然動き出したわけではありません。私が契約書にサインした日から動いていることです」
(海外の移籍窓口はあと10日ほどで閉まるが?)
「確かに外国から選手を連れてくる場合は、あと10日ほどでウインドーは閉まってしまいます。このような補強を行なう際に大切なのは、連れてくる選手が現在所属している選手よりも優れていなければならない、ということです。しかし、現在は世界のサッカー業界が変わってしまったということを、日本の方々は理解しなければいけません。一昔前のように代表選手として優れた実績を残した選手がキャリアを終える前にお金を稼ぐために日本に来るということはなくなってしまいました。
例えばピエール・リトバルスキーウーベ・バインギド・ブッフバルトのような実績を残し経験溢れる非常に優れた選手たちが、キャリアの終盤に日本に来るということはあり得ない時代になっています。彼らはアラブ諸国を選んでしまうというのが現状です。そして、ヨーロッパのサッカー市場は金額がとても高くなってしまいましたから、世界的に最もよく知られている5つのブランド・ネーション、イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスという5つの国から、主力として活躍しているような選手を引っ張ってくるというのは、ほぼ不可能になっています。
だからこそ、若い選手たちを育成していかなければなりません。この育成というところに、この国のサッカーの将来があるのではないでしょうか。そして、日本の選手だけではなく、アジア全体のマーケットを見渡さなければなりませんし、アジアの中で最も優れた選手がどこにいるのかを考えなければなりません。残念ながら、ヨーロッパ出身の優れた若手選手を引っ張ってくることも、とても難しい状況にあります。彼らはヨーロッパでのレベルアップを望んでおり、日本に来たら誰も自分のことを見てくれないのではないかという恐怖心があるからです。
現時点では、私たちのチームに2つの外国人枠が残されています。通常の外国人枠とアジア枠です。この2つに加えて、外国人でも使うことのできるC契約での育成枠があります。
今まで、私はさまざまな外国人選手を見てきましたが、このクラブの予算で買える選手で、かつ私たちが必要としている選手で補強となるような選手を見つけることはできませんでした。アジア枠であろうと、ヨーロッパ大陸の選手であろうと、現時点で予算に見合いチーム戦術にも合う選手を見つけられていない、これが現状です。