二宮君と山下清と流れ星

新学期が始まり、二年生の教科書も配られ、中身を見てびっくりする息子。国語の教科書を見ればなんだか難しい漢字がウヨウヨ。算数の教科書をみれば、数式が横ではなく、縦になっている事に驚いていた。はじまって二日目で、GWではなく夏休みはまだかと聞いてきた。さきが思いやられることである。私のほうも、いきつけの小児科の先生に、「学校の登下校がいじめの温床になっているから気をつけるように」といわれ心配になり娘と二人で、通学路が見える公園の砂場から毎日下校風景を監視しようかな、と考えたりもした。でも母娘がスカーフを頭に巻き、サングラスをして砂場にしゃがみながらスコップとバケツを持ってじっと兄の帰りを待っているところをふと想像するとやっぱり怪しいので、ベランダからのぞくぐらいにしておくかと思いとどまることに。とにかく息子については心配がつきない。だが親の心配とは裏腹に、実際学校では息子はなにやら一年生の時「嵐」のメンバーの二宮くん(二宮和也)に似ているとクラスの女子の間で評判だったらしい。とりあえずルックスはクラスの中で「イケている」部類に入っていたみたいだ。そういえば、担任にも女の子に人気があると言われたような・・・なるほど、二宮君に見ようと思えば見えなくもない、キャラクターも似ている気がする。格好もGAPやらアディダスやらを着て長い足をジーンズ包んでいると一見さわやかスポーツ少年に見える。だけど、私は知っている。彼がかぎりなくアキバ系に近いことを・・・そして、キャラクターも二宮君というよりは、山下清のほうがある意味近い。おにぎり好きだし(しかも中身が梅干しor赤飯しかうけつけない)工作が好きで、プラレールを通りこして夢は部屋をNゲージでいっぱいにすること。そして、彼は何よりもジャニーズの「嵐」を知らない。恐らく彼がテレビに出ている人で名前を知っているのは、リスペクトしてやまないわくわくさんとでんじろう先生ぐらいであろう。昨夜旦那が「テレビにでている嵐って知ってる?」と聞いたところ腕を組んで考えること数秒、「わかった!強い風がびゅ〜んと吹くことでしょ」と得意げにジェスチャーしていた。趣向には全くモテ要素がないけど、このピュアさもまたギャルのハートを掴むのかも知れない。まあとりあえず見た目だけでも山下清ではなく二宮君でよかった。で、流れ星伝説。強く雨が降り続ける中、夜道を車で走行している時のエピソードである。突然息子が「わ〜、流れ星がたくさんピカピカしてきれ〜い!」とうっとりした声で言うので、なんのことかと一瞬思ったのだが、どうやら車のウィンドウに打ちつける雨粒が街灯の光を受けてキラキラ光りながら流れ落ちる様を見ての呟きらしい。私はそのレッズ命の旦那の子とは思えない繊細な感性に感激してしまい、もしかして息子は将来詩人?いや作詞家になるのではと、親バカまるだしで思ったりしてしまった。そして一週間後。その日も雨で、車のウィンドウにはまたしてもたくさんの雨粒がしたたり落ちていた。運転する私の背後からブツブツとお経を唱えるような声が聞こえる。なんだろうと思って振り向いてみると、真剣な表情の息子が早口で何やら唱えている。これには私も驚いた。彼はゆっくりとした時間の流れの中にいる少年でそのしゃべり方も舌足らずで、スローであるのだが、この時は別人かと思うくらい早口でしっかりした発音であった。そして、セリフの内容を聞くと「ラジコンがほしい」やら「Nゲージでいっぱいにしたい」などの物欲系から「休みがたくさんほしい」とか「テストでいい点数とりますように」までそれこそ際限なく願い事が続くのである。しかも同じセリフを律義に三回ずつ、それはそれは執念と切実さをもったものであった。ウィンドウには打ちつける沢山の雨粒。どうやらこれらの無数の「流れ星」に願いを託していたらしい。前回、彼の感性に対して「さすが私の子」と思ったのと同じく今回また彼の煩悩の多さに対して「やっぱり私の子だわ」と思ってしまった、というのが我が家で流れ星伝説と言われるようになった由来である。